少女漫画 精神科治療に有効 母娘の葛藤と心の回復 心療内科は?

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少女漫画 精神科治療に役立つ

 

福岡大総合医学研究センターの西村良二教授(69)は、少女漫画に描かれてきた母と娘の物語は精神科治療で活用しています。

とてもユニークな分析だと思いますが、一体どうして有効なのでしょうか。

 

 

少女漫画が精神科治療に有効

 

精神科の診察室で聞かれることとして、母親が「娘をかわいいと思えない」というものであったり、逆に娘が「母の干渉がすごい」というものであったりするものがあるそうです。

そういった実際になるケースが、漫画の世界にもしばしば登場すると言います。特にそれは少女漫画に描かれているため、それを読んでもらうことで、自分の状況を客観視できると、西村教授は言います。

客観視できることで、その問題の解決の糸口になりうるというわけですね。

 

 

少女漫画 精神科治療での使われ方

 

西村教授は、診察した患者が漫画の特定部分に感動したら、その箇所を読んで心理状態を把握するようにしているそうです。

母娘の葛藤の図式は、本質的に変わっていないとする西村教授。それゆえ、漫画にもそれが反映されていて、少女漫画を半世紀前から現在まで追うことで、少女から大人の女性になるまでの精神発達のプロセス、心の回復といったヒントが見えてくるのだそうです。

だから、母娘の問題は、少女マンガが役立つと言います。

 

 

少女漫画 その内容と効果

 

 

楳図かずおさんの「ママがこわい」という漫画では、こわい母親が登場します。逆に、ちばてつやさんの「ママのバイオリン」では、優しい母親が登場します。

しかし、西村教授によると、主人公の子供にとっては共通して「母親がよくわからない存在」として描かれているそうです。

それが、今の小学校高学年ごろの女児にもそのまま見られるのだそうです。上記2作品は1950~60年の作品ですが、そのまま現代でも同じ現象として起こっているというのは、本当にその漫画を使うことで効果が出てきそうですね。

また、1970年代以降、ものが豊かになってきてからは、母親の愛に飢えた作品が登場します。

一条ゆかりさんの「デザイナー」では、自分を捨てた母への報復心と娘への嫉妬心を軸に物語は構成されているそうです。

くらもちふさこさんの「いつもポケットにショパン」では、主人公が自分に冷たい母に対し、実はそうではなかったことを、母の一言知り、愛が芽生えて自信を取り戻す様子が描かれています。

そういった場面を読んで感じることで、心を修復する鍵になるものが少女漫画にはあると西村教授は言います。

 

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少女漫画 精神科治療に役立つ

 

西村教授は、母娘の関係修復に欠かせないことを挙げています。それは…

1、「今の私のまま、変わらなくていい」という気づき。母とは違っていていいし、自分もそのままでいいとわかれば、親子という「ねばならない像」から開放されるということでしょうか。

2、「完璧な母親なんていない」と気づくこと。同性として、「母にはかなわない」と感じる娘の心には、自然に自己否定感が起きてきます。しかし、母親の限界を知ったり、足りない部分に気づくことで、やがて自分もなる母親という存在が「ねばならない像」ではなくなり、肯定感が芽生えてくるということでしょうか。

 

西村教授は、こんな関係の母娘には、萩尾望都さんの「イグアナの娘」と、よしながふみさんの「愛すべき娘たち」を薦めています。

「イグアナの娘」では、母の愛を実感できずに育った女性が、今度は自分が子育てをすることで、同じ困難を感じる様子が描かれていると言います。

また、「愛すべき娘たち」では、祖母、母、娘の3世代の関わりを描いていて、最後には主人公が母や祖母のトラウマに触れることで「母の不完全さ」を知るのだそうです。

こうやって聞いていると、なるほどこういう治療法もあるんだということを実感してきます。物語はストーリーがあるために、変に説明するよりもリアル感があって患者に効くということなのでしょう。

「しょせん漫画、されど漫画」というところでしょうか。

少女漫画を始めとする「漫画」という世界は、そこに入り込みやすく、自分に近かったりそのものである状況に触れることで、「安心感」も芽生えてくるのではないでしょうか。

つまり、その漫画が自分を認めてくれるということ。人は、誰かに認めてももらいたい存在ですから、漫画が「それでいいんだよ」と言ってくれる。これも精神的に大きいのだと感じました。

 

 

少女漫画 精神科治療に有効なら診療内科では?

 

今回の記事では、精神科の治療について取り上げていますが、心療内科では役に立つのでしょうか。気になったので調べてみましたが、まずそもそもこの2つはどう違うのかというところから。

 

精神科

心の病気全般を取り扱います。具体的には、うつ病、統合失調症(精神分裂病)、神経症(俗にいうノイローゼ)など。対人恐怖や、最近よく耳にするPTSDも神経症の仲間に入るそうです。また、アルツハイマーや、アルコール・薬物の依存症(中毒)も精神科の範疇のようです。

心療内科

こちらは内科の一分野で、身体の病気について心身両面からのアプローチを展開していきます。主として心身症を扱いますが、これは単一の病気ではなく、発症やプロセスに心理的な因子の関与が大きい一群の病気を指すそうです。胃や十二指腸の潰瘍、過敏性腸症候群、高血圧、狭心症、気管支喘息、片頭痛、円形脱毛症、アトピー性皮膚炎、更年期障害といったものがここに該当します。

 

こうして違いがわかると、心療内科の場合は、症状によって漫画が使える場合もありそうですが、内科の一分野になるので、症状としては該当しないことの方が多いようですね。

だいたい、心療内科は何の病気かわからないけれど身体に強い症状が出ていて、ストレスが関係していそうな場合に受けるところだそうです。

う~ん、何か中間に該当するような人がいるような気もしてきました。ということは、心療内科でも使えるものなのかも知れません。

医者ではなくて素人なので、これ以上の言及は避けます。

世の中には、意外なものに効果があることは結構あると思います。このような試みは、医師の研究の賜物といっていいと思います。

現代病とも言える、精神、心の病を治す方法がこれからもどんどん出てきてほしいと願います。